2016/10/29

ドン・キホーテ





スペインの哲学というものが
あるだろうか? 


あるのだ、それは
ドン・キホーテの哲学である。
概念を生かし勝利させるためには、
かっては風車に突進したり漕刑囚
たちを解放するために費したすべての
大胆さと勇気を傾けるであろう。


そしてわれわれにとっていま
彼が必要なのだ。


なぜならばわれわれをかくまで
卑屈にしているものこそ、臆病な
思考だからである。



それは永遠の問題に
直面しまいとする臆病さであり、
心の中を掘り下げまいとする臆病さであり、
われわれの永遠の魂が有する
内心の不安をかき立てまいとする臆病さである。



~ミゲル・デ・ウナムーノ、
「ドン・キホーテとサンチョの生涯」より~



ミゲル・デ・ウナムーノ・イ・フーゴは、
スペインを代表する哲学者であり詩人・劇作家、
キルケゴールに影響を受け、その影響度から
「南欧のキルケゴール」とまで呼ばれたミゲルは
自己を有神論からくる実存と捉えました。



それは一見、形而上を盲信するかのようですが、
よくよく見てみれば、それは矛盾の統合、
つまり「断言・断定」と「変化・持続」を
併合することで、生命そのものに活気を与えていますね(゜゜)



なるほど、活動と実体の変化である以上、
体系化されることはできない、と。
この物語はそんな根源的なテーゼを
書き現しているのかもしれません。



(余談が長くなりましたが)
今日はドン・キホーテの小噺でも。。。





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さて、世界一長く、そして認知度が高い
書物は何か?と言えば、ご存じ聖書です。
まさに超・超ロングセラーと言っても過言ではありませんね。




ではその次は?と聞かれると
北岳よろしく、悩む所でしょうが、
実は、この「ドン・キホーテ」なんですな。



著者はミゲル・デ・セルバンテス、
ななんと、400年以上前に書かれたものです。



ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)/岩波書店
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ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)/岩波書店
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ちなみにこれ、ただの時代小説じゃありません。
冒頭でミゲルが書いたように、この本は
スペイン人が持つ気高い精神性を表す哲学書であり、
聖書の様なものなんですね。




なるほど、ドストエフスキーも「天才によって作られた
あらゆる書物の中で、最も偉大で、最ももの悲しい書物だ」
と称してます。僕も何度か読みましたが、確かに
読者に伝染させる力を持っていますね(゜゜)



☞☞☞



理想と現実の狭間でドン・キホーテが向き合う
ナルシティックな自我はまるでジャック・ラカンの
「鏡」のよう。




彼の目に映る古い旅館は城郭であり、
旅館の女使用人は貴婦人、
そして自分は伝説の騎士なんです。




正気か、それとも狂気か。
聖なるものか、それとも俗物なのか。




普通に考えると狂気的ですが、ここからが面白い。




例えば最初はあざ笑わっていた使用人が
やがてその気になり、まるで貴婦人のような
振る舞いを始めるんですな。



つまり使用人の中(内)にある「貴婦人」を
ドン・キホーテが引きだしたわけだ




「ある」じゃなく「成る」。




それはまるで「混沌の世界」から
小さな局所的「ゆらぎ」を作り、
それがポジティブ・フィードバックとなって
全体の流れが大きく変わるような。。。





って。。。。これ、




イリア・プリゴジンの
「散逸構造」と同じ原理じゃないの( ꒪⌓꒪)ウソーン




☞ ☞





パスカルが「理性の最後の歩みは理性を
超えた事物が限りなくある、ということを認める事だ」
と言ったように、ミゲルもまた信念を持ち、
それに向かう姿勢によって現実は変わる
と伝えているのかもしれません。



下手するとファッショ的になってしまうけど、
ドン・キホーテを見ると、根拠なき自信の
大切さを教えてくれますね。




大事なのは現実を踏み超える事、
概念を現実に呼び出すこと。




それが冒頭の「概念を活かし勝利する」という事なのでしょう。





※この記事は2013年の記事を編集し、再アップしたものです。





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