2016/03/30

対話篇~桜折るバカ、梅折らぬバカ①~






「わー、桜だ~満開の桜だ~」




「ふいー、見事なもんだな」




「あっ、一人でお酒飲んでる!」




「花見と言えば酒だろ」




「毎晩飲んでるくせに・・・・」




「日本人は繊細だな、月を見て飲み
桜を見て飲む。こんなこと海外ではどこもやってないよ」




「そだね・・・・あっ、今日は僕も飲みたいな」




「お前が酒なんて珍しいな」







「ふー。ねえ聞いてくれる?」




「何かあると思った。どうした」




「この間、すごく傷つくこと言われたんだ」




「・・・・・」




「あなたはかに座のO型だからこういう性格でしょ、
私とは相性が悪いからすぐ別れるでしょうねって」




「ぶはは」




「笑うな!・・・・・そう言われたら
どうしていいのかな」




「そんな女、相性なんて関係ないよ。
遅かれ早かれ嫌になる」




「そんなことないよ!」




「君を君としてではなく、
タイプや種類として見てるんだろ。嫌になるさ」




「・・・・・」




「血液型という4種、星座の12種。
それと自分の種との関係性で判断する人っているんだな」




「それだけじゃ・・・・」




「そう、それだけじゃない。
しかし前提のフィルターはどっちだ?君か?種か?」




「・・・・・」




「多分後者だろ。山田太郎を見ているんじゃない。
人類の日本人系O型、かに座科なのだ」



「いつから僕は山田太郎になった」



「まだ名前が決まってないから仕方ないだろ。
まあ、そう言う人に限って都合が悪いことが起こると
安心できる人の詳細な知識を持ってくるもんだよ」




「詳細な知識?」




「まさに有名な占い師とか
セラピストが言ってるやつじゃないか」




☞☞☞




「こういったものは昔からある。
人間がいつも変わらないって証拠だな」




「そうなの?」




「平安時代には文字として残されているね」




「それって、紫式部の大和心?」




「紫式部が言ったのは大和魂。
大和心は赤染衛門だ」




「誰それ?」




「大江匡衝の奥さん。大江は平安時代の歌人だよ」




「あんまり有名じゃないね」




「大江の歌う和歌は非常に男性的な歌だったんだ。
例えば、こんな歌を詠っている」



儚くも思ひけるかな乳もなくて博士の家の乳母せんとは




「この乳は知識の知がかかってる。つまり
知識もない女が博士の家の乳母になるとは、
ずいぶんおかしなことを考えたものだ、と」





「・・・・・よく分かんない。皮肉なの?洒落なの?」





「洒落だな。そしてそれに対し、
奥さんの赤染衛門はこう返したんだ」



さもあらばあれ 大和心し賢くば 
細乳に附けて あらすばかりぞ





「・・・・全然わかんない」




「そんなもの、一向に構わないではないか。
大和心さえ賢ければ、乳など出なくとも子供を預けて
良いではないですか、って言ってるんだな」。




「さすが母ちゃん、って感じだね」



「そうだ。固い知識を盲信する男性に対し、
柔軟な知恵を女性は知っていたんだな」



「なるほど。理性派生と感性派生の違いか」



「昔の学問は男性のものだったからな。
そこで赤染衛門は思ったんだ。どうして学問する男はこうも
機転の利かないバカになるのか、ってね」



「男って、昔から頭でっかちだったんだね」



☞☞



「知識と言うもので人を固定してしまう。
これは今も昔も変わらないもんだ」




「だって、頼りやすいもん」




「知識ってやつはレッテルの役割にもなるからな。
それを貼ってさえおけば、考えずに済む」




「考えずに・・・か」





「スミレの花を見つけた時、スミレだと思ったら
もう目の前の花なんて見ちゃいない」




「小林秀雄だ。まだ守破離の守やってんの?」




「仕方ないだろ、余りにも深すぎて
ちっとも破れないんだから」




「もうかれこれ6、7年・・・・」





「うるさい!話が折れたから次回だ!」




「はいはい」



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