- 奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家 木村秋則の記録 (幻冬舎文庫)/幻冬舎
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リンゴ栽培には農薬は必要不可欠、
これは誰もが信じて疑わない常識であった。
しかし、その常識を覆したに男がいる。
奥さんが農薬の影響によって体調を壊した事から
彼は無農薬栽培のリンゴを作ることを決意した。
当然、何度も何度も失敗を繰り返す。
虫は葉を食い、花や芽は季節外れに咲いてしまう。
それでも木村さんは諦めなかった。
明確な動機があったからだ。
しかしその情熱を試すかのように
一向に無農薬のリンゴは生まれなかった。
☞☞
約10年の歳月が経ったが、
それでも一向に成果が実らない。
次第に周囲の農家からも孤立、借金は増すばかり。
極貧の生活の中、子供たちは一つの消しゴムを切り分けて使った。
私財も底をつき、精神的にも物質的にも
限界となった木村さんは、ついに自殺を決意する。
妻を元気にしたい、という動機であったのに、
なんという残酷な現実だろうか。
ここまでは誰もがそう思うだろう。
☞ ☞
木村さんは祭りの後、1人山に向かう。
首をくくるロープを「とあるくるみの木」へ投げ入れた。
しかしロープは引っかからず地面に落ちる。
それを拾おうとした木村さん、そこで「あることに気付く」。
その自生したくるみの木は枯れることなく、
害虫も発生していない。
そこで疑問が起こった。
死ぬ寸前であったにも関わらず、「それ」は自然に湧きあがったのだ。
なぜ山の中の木は肥料も農薬も使ってないのに
こんなにも青々しく茂っているのか?
ハッとした木村さんはその土を手にとってみた。
そして自分の畑の土との決定的な違いを発見する。
「土だ、土が違ったんだ」
まるで天啓を受けたかのように、その足で畑へ向かい、
その後ついに「奇跡のリンゴ」が生まれた。
地獄の中に光明を見たとは、まさに事の事である。
☞☞
これが途中で常識に縛られたり、
知人たちの助言に従っていたとすれば、
奇跡のリンゴはこの世に存在しなかっただろう。
どんな分野であれ、ある専門性を特化すれば、
必然的に既存の知識によって「自縛自縄」となってしまい、
場合によっては「他縛他縄」となる。
帰納的形式知において成立する専門家達の業界が
タコつぼ化するのも、こういった事が理由である。
しかし、このように根拠も何もない所にこそ、
奇跡的な発見や常識を覆すアイデアが起る。
僕はこの話がとても好きだ。
その事実を経験したら、強くなれる気がする。