時は江戸時代。
徳川家康が武将達を集め、食べ物についてこう尋ねたという。
「この世で一番おいしいものは何か」。
武将たちの答えはそれぞれ。
酒と答える者もいれば、好きな菓子や果物の名前を挙げたという。
当然、家康は不満である。
そこで家康は、側室である、英勝院(お梶)に
「なにが一番、美味しいと思うか」 とたずねた。
お梶はこう答えた、
「一番おいしいものは塩でございます」 と。
家康はさらに「では、一番まずいものは何か」と尋ねた所、
「一番まずいものも塩でございます」 と答えたそうだ。
家康は、お梶の聡明さに大変感心したという。
さて、今でも塩は「味の決め手」である。
つまりあらゆる味を活かす素材だ。
よって、お梶が言うように一番美味しいものに間違いない。
また、全ての味を殺すのも塩だろう。
よって塩は一番まずいものでもあるのだ。
つまり塩とは「美味しくも不味くもないもの」。
こう定義できる。
このように、塩とはサジ加減一つで変化する
一番分かりやすい食材なのだ。
塩とはあらゆる素材をまとめる「部分」である。
その加減を知ってこそ、本質(肉や魚)は活かされる。
火加減もそう、ゆで加減もそう。
あらゆるものは「加減」によってその持ち味が際立つのだ。
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料理に限らず一流ほど、素材にこだわる。
しかし、どんなによい素材を手に入れても、
加減がなければ、その素材を殺してしまうだろう。
活殺はその人次第、「加減覚の知」。
これがリゾームで一番難しい概念だ。
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