2015/07/17

対話編 ~強要された理想~




「はァ・・・・・・ふぅ・・・・」




「どうした、夏バテの先取りか?」




「ねえ・・・・エゴって、捨てれるの?」




「捨てようと思って、捨てれるもんじゃないだろ。」




「君、よく自我を批判してるじゃない。
あれって、捨てなさいってことだよね」




「僕は自我を捨てろなんて一言も言ってない、
中心軸にするなとは言ってるけど」





「じゃあ、この間のセミナーとは違うのか・・・」





「おい・・・・・・また行ってきたのか」





「そこで言われたんだ。
謙虚に生きるにはエゴを捨てなさい、って」




「お前、出家して仏にでもなるつもりか。
それくらい極端なことを言ってるぞ」




「今になって、そう思ってきた」




「で、そのセミナーの参加費、いくらしたんだ」





「1万5千円」





「あはは、そいつ自身がエゴの塊じゃないか」




☞☞☞





「あとね、色々手放せとか言われた」




「手放せないなら手放さなくていいよ」




「だって、それは執着だって言うんだもん。
握った手を離さないと、新しいものが手に入らない、って」




「それは新しいものを手に入れたい、という
別の執着だと分からないのか?」




「あ・・・・・」




「そもそも離したくない、ってことは
それだけ信念を大事にしてる証拠だろ。
他人から見れば、どうとでも映るよ」




「でも、参加した人たちは
みんな真剣に聞き入ってたよ」




「多分、純粋に世界を救おうと思ってるんだろう」




「話したけど、すごく優しい人たちばかりだった」




「極端に真面目だったり頭が良いと
その純粋性や完璧性を整合させようとするからね。
それが逆に隙間を作ってしまうんだ」




「そういや君は真面目でもないし、頭も良くないよね。
それくらいの余白があってちょうど良い、ってことだw」





「・・・・・なぐるぞ」




☞☞



「どれ、パンフレット見せてみろ。
ふん。。なるほど、その道ではカリスマのようだな」




「この日も、すごい集まってた」



「世界を救う、か。
さて、どうやって救うんだろうか」




「そりゃ、その理想を普及することでしょ」



「それは誰にとっての理想だ?」




「全世界の人類」




「つまり、全世界の人間には共通した
理想の形がある、と言ってるのだろう」




「君だって、幸福は普遍の真理だって言ってるじゃないか」




「そりゃそうだ、好んで不幸になりたい
奴なんか一人もいない。一見不幸そうでもね」




「それと同じじゃないの?」




「んなわけないだろ。
その幸せの形は、全員バラバラなんだから」




「幸せの形を一緒にしてる、ってこと?」




「謙虚に生きろ、エゴを捨てろ、手放せ。
それが条件だ、って言ってるんだろ。
そんな世界、窮屈だよ」




「うん、それができないと苦しいね」




「つまり、幸せのテンプレートは
全員同じであるべきだ、というエゴだ」




「それを否定するのもまた、エゴじゃない?」




「そう。命令禁止という命令(笑)」




「複雑だけど。。。つまり「そうあるべき」を
「やめるべきだ」ってことだよね」




「簡単に言えば押し付けない、だね。
達観した人はそれにも「囚われない」とかいうけど」




「それって、ホントなの?って疑ってるんだ」




「そ。自我というものは
そこまで最小化ができるのか疑問だね」




☞☞




「さっきの人もその思想に自信があるなら、
積極的にやればいい。ただし個人としてね」




「その人らしく生きてるだけだもんね」




「そう、別に立派に生きるなら生きていい。
淡々と生きようが、楽に生きようが、
創造的に生きようが、それは自由だ」




「ただ、その責任は取りなさいよ、か。
この記事にも書いてるね」




「僕はどうしても無責任な集団とは
一定の距離を置いてしまうんだ」



「どこにでも正しい、って押しかけるからね」




「まさにその正しさから生まれたものが
さっきのような統一の目的を作ってしまう」




「完全の裏には不完全さの拒絶がある、と」




「自分の愚かさや不完全さを知らない人ほど、
偽善的になりがちだからね。
自分自身と折り合いがついてないのに
他人と折り合うわけない」



「それを自覚してない人を、君は批判してるんだ」




「そう。そういうお前は何様だ、と
不完全な人が他人に完全を説くなんて、ナンセンスだよ」




「近江商人が三方良しを説いたのは
こういった背景があるからかもね」




「商売と思想は重なる部分があるからね」




☞☞




「あー、なんだか完全って言葉が
分からなくなってきた」




「完璧な花なんて言葉、ないからな。
それと同じことだ」




「美しい花がある。花の美しさというものはない・・か」




「その小林秀雄の言葉は、世阿弥の言葉でもある。
まっ、形式として外に出せる性質じゃないんだよ」





「なんかスッキリしたら、お腹空いてきた」





「よし、その欲求には従うとするか」





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