近代日本画家である伊藤若沖は、
対象を細かく描きながら、自己の創造性と
融合させていることから、奇想の画家と呼ばれた。
そんな伊藤の作品である
「動植綵絵(どうしょくさいえ)」の中に、
秋塘群雀図(しゅうとうぐんじゃくず)というものがある。
七十以上の雀が、稲穂が実る秋の時期、
一斉に飛び立っている、躍動感のある作品だ。
ふと見れば、そんな雀の中に
一羽だけ「白い雀」が描かれている。
白い雀は言わば「異質」である。
醜いアヒルの子なのだ。
人間からすれば、差別の対象である。
大衆という枠からはみ出した、特異な存在なのだから。
しかし、その白い雀は群れから
離れることはない。
それどころか、他の雀たちと、
何ら変わらないかのように一緒に飛び立ち、
同じ方向を目指しているのだ。
つまり、選ばれたリーダーとして
率先しているのでもない。
なるほど、
白い雀とは特別な存在なんかじゃない、
そんなもの、我々の目鼻立ちと変わらないのだ。
目指す方向へと無心で飛べ。
この絵を見ると、そんな意図が感じられる。
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