2012/10/15

コムニタス

些細なことでも怒ってしまい、感情を抑えられず、
感情がコロコロ変わって自分でも疲れる。


周囲に理解してもらいたいが、なかなか理解してもらえず、
見捨てられることを極度に恐れ、なりふりかまわない努力をする。


そんな人を境界性人格障害(境界例)と言うらしい、
現代病の一種である。


さて、ネットを見ればこの境界例に近い心性を持っていると
思わずにはいられないサイトが数多く存在する、なぜだろう?



象徴人類学者ヴィクター・ターナーの説く
「コムニタス」という概念がある。


それは通過儀礼といった人間関係における在り方であり、
身分や地位財産男女の性別や階級とは違い、
非構造である環境において、自由で平等な相互関係を指す。



ネットの「完全なる表現の自由」はコムニタスとも考えられる為、
境界例のコムニタスへの希求はきわめて強いのだ。


慢性的な空虚感。そして感情の不安定さや絶望感。
これらを癒し、自己を支えているのがコムニタスであるネットなのかもしれない。



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このような、コムニタスと境界例を関連づけたのは
心理士を実質的に生みだした河合隼雄である。



境界例には構造的なものに対する徹底的な弱さと、
コムニタス的関係様式への絶対的希求があるとしている。


組織の一員として存在することができず、
コムニタスの様な自由で制約のない世界でしか、自己を保てないのだろう。



しかしコムニタスではアイデンティティは確立できない気がする、
重要なのは先にある「場」ではなく、その環境に身を置く自己の認識ではないだろうか。



私は独立する以前、組織の中間管理職として働いてきた、
当然組織は不条理なことも多いし、管理によるストレスも大きかった。



それでもこうやって健康でいられるのは理由がある。
ここでヒエラルキーを否定してはいるが、悪い所ばかりではなかったのだ。



毎年飲み会や旅行などの行事をまとめる幹事をやっていた。
仕事ではゴタゴタの多い職場であったが、飲み会ではガラリと変わり仲が良い、
これを見るのが楽しくもあった。


QC活動でメンバーと白熱しつつ、最終的に素晴らしい賞を頂いたのも、
衝突した上司が一番信頼できる人になったのも、ある意味「立場の差異」があったおかげだ。



結局何が言いたいかというと、我々の関係性とは「安心した土台」がなければ
脆弱なままなのである。



例えばコムニタスでは自由でこそある反面、社会的身分も役割もない。
つまり安定した土台自体がないのである。



よって常に生身がさらされ、互いに傷つきやすい関係であり
それはやがて、争いのタネとなる。



つまりコムニタスの状態のままでは、維持する事が困難なのだ。



仮にコムニタス的だった集団があったとしても、やがて「秩序」が起きる。
プリコジンの言うように、開放系の我々が無秩序に集まってたとしても、
散逸構造でいう「新しい秩序」が生まれるのだ。



これは実にもどかしい選択である。
つまり自由性は「常に変化し、脱皮することで保たれる」という事だ。



固定した瞬間、秩序が生まれる。
それは安定こそあるけれど、階層的な構造が必然的に同時発生するのだ。


聖人君主のような人格論からかもしれないし、ディベートの結果かもしれないし、
おかしな民主主義のような多数決かもしれない。


このように、自由な環境であっても
決断する時において我々は、この自由(自らに由る)を崩壊させるのだ。


しかしリアル社会と違い、ネットでは都合のいい一元論が通用する。
だからこそ境界例の多くはコムニタスとして帰依しているのだろう。



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ただし、これは非適応的な信念である。
非適応的な信念(思いこみ)と現実はリンクしない。


しないというより、認識で「我々が非適応になる」のであって、
逆に自由でも愛され、守られている人だっている。



それはその人が特別ではない。
その人の認識が「適応的」なだけなのだ。



時代は我々の認識を変える。
変わった認識が感情を決定し、決定した感情の集合体が時代を変える、
すなわち「多即一」、これが「場の創造」である。



コムニタスは場の創造が困難だ。
常に孤独で戦う為、認識が不安定となる。



それが可能なのは一部の芸術家や天才といったものだ。
彼らはどれだけ批判されても、一人で確固たる世界認識を創造する。



そして、その世界認識にやがて世間が追いつくのだ。
カフカ、宮沢賢治しかり、ゴッホ、アボガドロ、ロバチェフスキーしかり。



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リゾームが派生する場合において、
これらの概念は重要である。




なぜならリゾームは単純にやればコムニタスである。
それでは責任の所在も動機も意味もない、ただの遊び場である。




では何が必要か?
もしかしたら来月分かるかもしれないんだなぁ(笑)

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