2015/08/05

対話編② ~ペア・陰陽・漢意・真心~





「さて、前回のおさらいといくか」




「えっと。世界は二項のバランスで成り立ってて、
陰陽のバランスを取るのが東で、陰を排除するのが
西の基本原理になってる」



「そう。この陰陽、すなわち二項対立から派生する
観念というものは、かなり古い時代から存在していたのだ」



「君はそれを自然法則だって言ってるんじゃないの?」



「条理のことか?バカ言っちゃいけない。
一切を二分岐して作ったのが、陰陽の理だ。
僕はその陰陽の「間」を実相だと思ってる」



「そだった。決まってないことが
決まってるんだったね」



「固定された正解もその根拠も分からない。
陰陽五行などの基盤ができる以前にあるもの、
そんな調和の精神が、神道にはある」




「特定の思想じゃなくて、自然回帰によって
自己確立さえすれば人と争うこともないしね」




「そう。争いの大半は何かを作り上げ、
それを絶対化してるからな」




☞☞



「最近ネットでは賛成派と反対派が
理屈で戦ってるけど、水平線のままみたいだね」



「例の件か。そうなるだろうな」




「君は自然以外のもの、人工的なものは
全て間違ってる、って考えでしょ」



「その時は正義でも、後になったら
悪に変わるのは世の常だからな」




「つまりそれ自体が答えられないものだ、と」



「なぜ?どうして?その理由・その根拠は何?」
これを問い、答えを出すのが理性派生だが、
そもそも論、問い自体が間違ってる」




「なぜ?(笑)」




「こういった問いは円周率なのだ、
どんな解答であっても、すぐに次の問いは
再生産されてしまう」




「問いは新しい問いとして、生き延びちゃうんだね」




「人間が全ての根拠を把握できるなら話は別だろう。
しかしバタフライエフェクトよろしく、物事の存在の意味は
我々に理解することはできない」



「別次元の根拠がある、ってことね。
つまり、存在の根拠を問うという事自体が
根本的に間違ってるって言いたいんだ」



「それを自分の頭の中で価値体系化すれば
「絶対的なもの」が生まれ、必然的に善悪へ向かうだろう」



「最近、特にその傾向が強いね。
でも、どうして体系化したらダメなの?
天気予報も、人間の知恵だといえるじゃない」



「このような理性派生の世界というのは、
理性を超えたものや曖昧な概念など
枠から外れた想定外を無価値なものとする」



「あーね、無駄なことだと片付けられるんだ」




「しかし、僕に言わせればその無駄なものは、
単に理論と合致していないだけだ」



「そだね」




「つまり理性で把握、コントロールできる
枠内だけの世界が現実である、と思ってるだけだろ」





「それってガチガチだね、理性の牢屋みたい」




「本来の世界はそんな単純じゃない。だからこそ
生々しさがあり、躍動感を感じれるんだよ」



「エラン・ヴィタール、生命の躍動か」



☞☞



「ありのままの現実は陰陽みたいに
綺麗に2つに分かれてない、ってことだね」



「そんな区分け、価値体系化などを
離れることによって「もののあはれ」を感じれるのだろうね」



「それって、現実が楽園みたいになるのかな?」




「経験してないから偉そうに言えないが、
それは違うと思う」




「えっ、違うの?
よく同じ現実でも視点で変わるって言われるけど」



「確かに。ただ、それもまた自分の観念に色づけされた
都合のよい世界であることには違いない」



「あーね、楽園っていうメガネをかけてる、と」



「本居宣長は、ありのままの世界とは
それぞれが独自の固有形状を保ちながら、
ただそこに存在しているという、事実の世界であると言ってる」



「空は空、男は男、水はただ水として
存在しているって視点か。確かに理性は介入してないね」




「水が水として流れている、という事実に
法則なんて存在してない。ここに既成概念が
入ると、母なる海となったり、分析されたり、
陰陽五行という体系が作られたりする」




「うーん。比較判断せず、そのものを見るか~
ちょっと味気なく感じるよ」




「その存在そのものを見ることができれば、
形容しようにも言葉にできず、ただ深く心に感じ入る。
これが嘆息である「あはれ」だ」




「それ以外、表現のしようがなくなるんだね」




「そこから自然と湧き上がってくる感情、
これこそ「畏怖の念」。神秘性と同時に恐れも感じるのだ」




「奇霊く、微妙なり、か。
確かに、圧倒的なものを見るとそうなるよね」




それをなんとか形にしようと思うのが
アーティスト、表現者なんだろうな。







「だいぶ分かってきたかも。
確かに、世界は不思議と驚きの連続だね」




「因果や縁など、点だけを見ても分からなかったものが
後に線となって現れたときなどもそうだな」




「僕らは今の「現時点」で意味を求めて
あれこれと正解を見つけようとするもんね」




「そう、映画のワンシーンを切り取って
眺めることしかできない以上、
どれだけ知恵を尽くしても、分かりっこないよ」




「理の先に立つ世界あり、か」



「そ。だから理の世界である漢意を
宣長は絶対化したらダメだよ、って言ってるんだろう」





「でもね、やっぱり陰陽は
自然な働きがあると思うんだけど」





「では、次回はそれをテーマにしてみるか」




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